現状分析では何を調べればよいか|システム導入の成否を分ける「このままではいけない理由」
システムの開発や導入を検討し始めて、何から手をつければよいか迷っている方に向けた記事です。結論から言うと、現状分析で最初に明文化すべきなのは「なぜ、今の状況のままにしておけないのか」です。この記事では、その理由を言葉にする方法と、現状分析で調べることを順に説明します。
なぜ、ヒアリングだけでは課題がぶれるのか
「何をしたいか」「何が欲しいか」を聞くと、答えが人によって変わり、着地点が定まらないからです。発注する側が本当に解決したいのは、システムを入れることではなく、その先にある業務の課題です。
ところが、自社の課題を他者に正確に伝えるのは難しいことです。社内で各部署に話を聞き、共通の認識を作り、次々に出てくる問題に優先順位をつける。この過程を共有していない開発会社に、結論だけを伝えても、課題の立脚点がずれてしまいます。立脚点がずれれば、ゴールもずれます。
最初に明文化すべきことは何か
**「なぜ、その状況のままにしておくことができないのか」**です。これが、課題解決の立脚点になります。
この理由を詰めるには、その業務に携わっている当事者の体験を聞きます。感想ではなく体験です。体験は事実です。実際に起きた都合の悪い出来事に目を向けると、その出来事を引き起こした環境の中に、解決すべきものが見えてきます。
現状分析では、何を調べればよいのか
立脚点が決まったら、その課題に関わる業務を、次の5つの面から調べます。
| 調べること | 具体的に見るもの |
|---|---|
| 業務の流れ | 誰が、いつ、どの順番で、何をしているか |
| 画面と帳票 | 使っているシステムの画面、紙の帳票、Excelと、その使い方 |
| データ | どんな情報を持ち、どこから来て、どこへ渡しているか |
| 外部とのやり取り | 取引先、ほかのシステム、外部のサービスとのやり取り |
| 例外と工夫 | 特定の取引先だけの扱い、月末だけの作業、人が気を利かせて補っていること |
最後の「例外と工夫」が、最も漏れやすいところです。
なぜ「例外」を調べる必要があるのか
システムは、人のように気を利かせることができないからです。システムは命令の集まりなので、決められたルールしか実行できません。
たとえば、人であれば「この得意先は欠品があると注文を全部取り消されるから、先にすべての商品の在庫を確かめよう」と先回りできます。システムにさせるには、「得意先Aの注文を受けるときは、明細のすべてで在庫が足りるかを確かめ、欠品があれば入力を止める」というルールとして作る必要があります。
このように、意思決定の間違いや作業のミスが起きないためにどんな機能が要るかを考えていくと、欲しい機能の解像度が上がります。解像度が上がると、開発会社からも踏み込んだ提案をもらいやすくなり、提案とのずれも見分けられるようになります。
情報を集める前に、何を決めておくべきか
判断の軸です。多くの会社は、まず製品や開発会社の情報を集めようとします。しかし、判断の軸が定まっていないまま集めても、検討は進みません。
「なぜ今のままではいけないか」と「そのために何ができればよいか」が決まっていれば、集めた情報が自社に合うかどうかが、感覚的にも見えてくるようになります。
実際の案件では
管理会計システムの導入支援(フエニックス・コンタクト様)では、パッケージを導入する前に、それまで使っていたExcelの改修から始めました。管理会計の集計と報告は、数十のシートにまたがる複雑なExcelで行われており、特に配賦のロジックが入り組んでいました。このExcelを改修する作業を通じて、管理会計の今の流れを押さえたうえで、パッケージの仕様と業務の差を整理しています。
当社の開発でも、最初の段階は「コンセプトワーク」と呼ぶ現状分析です。業務フローと作業一覧、使っているシステムや帳票を調べ、現場の負担や属人化といった「業務ストレス」を言葉にします。進め方はAI開発のページで紹介しています。
まとめ
- 現状分析の立脚点は、「なぜ今の状況のままにしておけないのか」を明文化すること
- 当事者の感想ではなく、実際に起きた体験を聞く
- 業務の流れ・画面と帳票・データ・外部とのやり取り・例外と工夫を調べる。漏れやすいのは例外と工夫
既存のシステムを置き換える場合の進め方全体は、「システムリプレイスの進め方」にまとめています。
よくある質問
現状分析には、どのくらいの期間がかかりますか?
対象の業務の数と、関わる部署の数で変わります。期間を見積もる前に、どの業務を対象にするか、誰に話を聞くかを先に決めると、見通しが立ちます。
現状分析は、開発会社に任せてもよいですか?
調べる作業と整理は任せられます。ただし、何が課題で、どれを優先するかを決めるのは発注側です。当事者に話を聞ける場を社内で用意することが、任せる側の一番の仕事になります。
ヒアリングでは、何を聞けばよいですか?
「何が欲しいか」より、「実際に何が起きたか」を聞きます。困った出来事、そのときの手順、使った帳票やExcelを具体的に聞くと、解決すべき課題が見えてきます。