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iPadのPC化への革新は、イノベーションのジレンマなのか


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iPadが進化していく方向性が、イノベーションのジレンマによく似ています。

 これまでのiPadシリーズは、iPhoneの延長線上にあるタブレットとして「ファイル」を意識させないユーザーインターフェースが採用されていた。何かをしたいときは、アプリのアイコンをタップするというのが基本となり、データはそれぞれのアプリで管理する。ファイルやフォルダの存在を徹底的に隠してパソコンの難解さを排除したことによって、iPadは幅広い層に受け入られてきた。

とはいえ、やはりプロユースも多いiPad Proだと、それが煩雑に感じられることがある。例えばオンラインストレージからファイルをダウンロードして、編集したあと、アップロードして誰かに送るとき。パソコンなら、ファイルを落として適当な場所に保存したあと、編集して、そのままメールなどでファイルを送る。一方のiPadは、使おうとしている編集アプリが普段使っているオンラインストレージやメールアプリに対応していないと、操作が途端に複雑になる。

低迷iPad、「パソコン化」で再起 アップル新戦略

Cドライブってなんですか

前職でPC操作を教えている中で一番驚いたのが、WindowsのCドライブの存在を知らない人が多いことでした。パソコンは仕事上使っているけれども、フォルダやファイルがツリー構造になっていることを知らないので、ひたすらデスクトップにファイルやフォルダを置きまくるという人は結構います。

スマホアプリ等でYoutubeの閲覧やゲームをするのであれば、ファイルの保存先がどこになるかなんてどうでもよくて、アプリを開いた時に前回までの操作内容が記憶されていればよい。Cドライブの概念は本質的ではない、確かにそうかもしれません。

ビジネス用途では複数のアプリを使う

一番簡単な例が、Excelで資料を作って、メールで添付するという行いです。 個人の用途からビジネス用途になると、利用するアプリケーションの数が増えていき、それらを共有するというニーズが出てくるようになります。ファイルの存在を意識しないのは無理があります。標準的なファイラーがないので、いちいちアプリを起動したりメールアプリを起動して添付ファイルを探したり…なんて行いをするのも「PCとして使うには」本質ではない。

iOS 11になってから、ついにファイラーが標準搭載されるようになりました。この恩恵に預かるのは仕事でデータを共有する必要がある人たちです。独立したアプリを使うところから、複数のアプリを使ってデータを共有するという形へ、iPadを使うユーザーのニーズが高度化した現れであると言えるでしょう。

改良へと向かうイノベーションのジレンマ

有名な「イノベーションのジレンマ」では、イノベーションには大きく2つあると語られています。1つは、従来製品の改良を進める「持続的イノベーション」です。もう1つは、従来製品の価値を破壊して全く新しい価値を生み出す「破壊的イノベーション」です。

改良の中でも特に持続的イノベーションだなと感じるのが、スペックのアップグレードです。チップが変わりました、メモリ容量やディスク容量が増えました、ディスプレイが更に細かくよく見えるようになりました。これらのハードウェアの進化によってサクサクとアプリが動き、大画面であることでUXが変化することは否定しませんが、顧客がその品質を渇望しているかと言えば、そうではない。 100馬力と120馬力のエンジンの違いなど、ないようなものです。でも、「旧式と何も変わりませんでした」とは口が裂けても言えない。

iPadがノートPCへの代替を狙う方向で進化を加速させるのであれば、まさしくこれは「持続的イノベーション」です。より高度に、より多機能に。今までの延長線上で進化を遂げるなら、そういった方向性になります。持続的イノベーションの困った所は、品質が要望を追い越してしまう点です。 顧客の見えないニーズは、断続的なものです。プロユースではない顧客の要望は、追い越してしまった感が否めないです。

タブレットは用途特化型への進化しそう

タブレット端末は今後より用途が特化された方向で進化するのではないか、と感じています。

タブレット端末がPC化する意味はあまり無い。それならば、ノートパソコンにはかなわない。液晶タブレットとしての進化、ビジネス端末としての進化、読書端末としての進化…用途特化型でバッテリーが長持ちする、持ち運べる相棒という立ち位置になると面白いと思います。

私が一番欲しいタブレットは、電子ノート特化型のタブレットです。

10.5インチ以上のE-inkのタブレットでApple Pencilのかき心地を提供してくれるタブレット。電子ノートの決定版が欲しいです。その際、ものすごく精密なディスプレイにしてほしい。英語の筆記体のような文体であれば問題ないのだけdo、Apple Pencilで漢字を書くとニョロニョロとした字になりやすい。ミミズが這ったようなというか… 漢字の書き取りに最適化され、目が疲れないE-inkのタブレットで、PDFの編集が可能で、ペン書きに対応しつつも、Markdown等にエクスポートできるノートアプリがあること。スマートキーボード的なものもあるといい。これが出たら、即買いです。

タブレットはもっとハードウエアレベルでの差別化を図ったほうが、「刺さる」ように思います。上記のようなタブレットが発売される日を楽しみにしています!!


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執筆者について

著者

(株) クオリティスタート 代表取締役

湯本堅隆(YUMOTO Michitaka)

略歴

1979年生まれ。ISPの電話サポートのアルバイトをきっかけにIT技術に興味を持ち、2003年にアイ・ティ・フロンティア(現タタ・コンサルタンシー・サービシズ)に新卒で入社。

SIer在籍期間からブログ「GoTheDistance」でSIerを巡るIT業界のあり方・エンジニアのキャリアについて記事を書き、累計はてなブックマーク数40,000を超えるブログになりました。

「ITを使いこなしたいなら、ユーザー企業は内製すべき」と主張しているうちに、2009年から雑貨卸の有限会社 エフ・ケーコーポレーションで内製化を1人で担当するはめに。メーカー送料ロットのない雑貨卸というビジネスモデルをITシステムを実装することで確立し、経済産業省が主催するIT経営実践認定企業に選ばれました。

「システムを作る人材や会社」はあっても「何が正しいITシステムなのか」を事業会社の立場で考え、デザインできる人材が枯渇している。

この課題を解決したいという思いから、会社を創業しました。

重度の野球好きで、東京ヤクルトスワローズのファンです。


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