新しいシステム導入・開発のご相談を頂くうえで最も私達業者側にとって悩ましいのが、「御見積を出すにもコストが相当かかる」という点です。これは、私達が納品する「システム」というのが不定形な成果物であることに由来します。
私達が解決するのは、1社1社固有の業務課題です。人が足りないとか、業務効率が悪いとか、ミスがなかなか減らないとか、大きく言えば同じような言葉で表現されますが、背景が違います。
当社は製造・卸のお客様が多いですが、同じような業種でも、商品の売り方・販促にかけるコスト・在庫の管理のやり方・社内でのコミュニケーションパス・現行利用しているシステム・お付き合いのある貴社のお客様のルールやご要望・社内におられる事務方のスキルセットなど、色んなことが違っております。
だいたい共通しているだろう業務を最大公約数でくくれば70点は取れるんですけど、70点で「いいね!」って仰るお客様はいない。自分がモノを買う時も同じことなので。そのため、私達は「寄り添った」提案をさせて頂く努力をしないといけない。その必要があります。
寄り添った提案をするためには、多くの時間を割いて貴社の課題を私達と共有したうえでフィットするシステムのイメージを固めて、操作性がイメージできるような状態に持っていくわけですが、長いときはそれに1ヶ月近くかかります。もはや見積ではなく、コンサルティングです。そして、そのコンサルティングに近い状態でご提案して、その内容を他社に投げられて叩かれたというケースに出会ってから、なんのために見積を出すのかよくわからなくなった時期もありました。
社内調整がままならないと、私達も踏み込んだご提案がしづらいです。導入後にリーダーシップを取って新しいシステムを使うことを推進し、嫌な言い方すれば強いることができる体制が整っていないと、検討ボックスに入ったまま終わるケースも多いため。システム導入は推進力を上げていくのが極めて難しく、トップの危機意識が高くないと現状維持で終わります。導入しなくても業務は回していけるため。そういう雰囲気は、感じ取れるものです。
不定形な成果物を作って課題を解決するには、見積の段階からコンサルティングを行う必要があるため、可能な限り、貴社の課題を明文化した状態でお話ができると助かります。
システム導入に特有の問題が、不定形であること。最初にこれでいきましょうで合意したものから、どうしたって改修が入ります。実際に使って検証して初めてわかることも多いです。最初に見えている機能や画面のまま終わることは「まず」ないです。その分のコストを見積の段階でドンと乗せるのも難しい。
最初の前提から業務上の不都合を解決するために要件が変わりましたで、その都度チャージさせて頂けるなら良いですが、ほとんどはそうならない。予算が決まってしまっているため。業務委託で作業時間のチャージだけで進めるなら単純なので、請負を一切やらないケースも散見されます。ですけど、請負を求めるお客様も多いです。どこでリスクを分担するのかですが、基本はお客様がリスクを負うべきです。
発注しているのにリスクを負えってどういうこと?ってなるかもしれませんが、業者を使う責任は必ず存在します。その責任は、社内調整に帆走されているかどうか、我々ができない・困ると言っている機能要件に向き合って頂けるかどうか、追加チャージもやむなしと社内で調整して頂けるか、などです。
これから、システム開発の世界は大きく様変わりしていきます。どんどん進化させていける会社と、システム化が一向に進まない会社の差が、とんでもなく開きます。それが競争力の差になってビジネスに影響を与えるように確実になります。規模が小さく、フットワークが軽い会社に有利になります。その時、ITを使えるパートナーがいるかいないかで、貴社のビジネスの成否をわけると確信しています。